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DQIIレビュー


シリーズ化への一歩

 待望のDQシリーズ第2弾。DQIの制作段階で既に続編の制作を考慮していたと思われるが、本作品によりドラクエはシリーズ化の第一歩を踏み出した。物語の舞台は前作の100年後の世界。プレイヤーは前作の主人公の末裔達をあやつり、謎の邪教集団の野望を打ち砕くべく冒険に出る。わざわざ遠くはなれたローレシアまで足を運び息絶える兵士、後継ぎの1人息子を孤独な旅に出させる父王など、開幕のストーリー展開は非現実的と言わざるをえないが、そこはゲーム。そのあとには楽しい冒険の世界が待っている。
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 竜が何の目的・目標にもなっていないにも関わらず何故「ドラゴンクエスト2」か?という、子供達の間でよくある質問。回答はいくつかあるが、とりあえずドラゴンクエストの続編だからと答えておけば問題ない。
 では、DQIIとは一体どのようなゲームだったのだろうか。難易度の高さばかりが目立ちがちだが、プレイヤー(特に初心者)への配慮もいたるところで見受けられ、前作から継承されたゲームシステム・演出面のパワーアップは、もはや最終形態に近い段階まで高められたといってもいい。それでは、パスワード制RPGの限界に挑戦した本作の長所短所、その一部を紹介しよう。

最も難しいドラゴンクエスト

 本作品は、DQシリーズの中で最も難しいと言われ、最難関ダンジョン「ロンダルキアへの洞窟」攻略の達成感を忘れられないプレイヤーも多い。DQIIが最も難しいDQとなった最大の要因は、もちろんバランス調整不足によるものであるが、これは製作側の視点。プレイヤー側の視点から見れば、それはサマルトリア王子の弱さということになるだろう。強力な武器が装備できず、呪文も王女のほうが有用なものが多く中途半端。ゲームの進め方によっては、最大HP(分かりやすく言えば体力のこと)が女性に抜かされることもあり、マンドリルの打撃やドラゴンフライ群による炎で瞬殺されることもしばしばであった。 また冒険終盤には蘇生呪文ザオリクをパーティー内で唯一覚えるものの、実際には最初にサマルトリア王子が殺されることが多く、ここでも一層使えない感が増すこととなる。多くのプレイヤーに役立たずの烙印を押された彼は、後に愛すべきDQキャラクターとして定着していった。

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 当時、稲妻の剣を自力で入手したプレイヤーはどの程度いたのだろうか。稲妻の剣の入手先や「はかぶさの剣」の裏技を知らなければ、最終決戦は光の剣で挑まなければならない。その場合、冒険終盤の難易度は更に跳ね上がっていただろう。

理不尽な難易度とは裏腹に、プレイヤーへの配慮も

 モンスターの強さばかりが目立つ本作ではあるが、それ以外の部分、つまりゲームシステム的な問題に関しても理不尽だったかというと、けしてそんな事はなかった。寧ろ、プレイヤーが必要以上にゲームシステムを複雑に感じないよう、特に冒険の序盤に関しては巧みなゲーム作りが成されており、かなり好感が持てる。

 例えば主人公が呪文を覚えないことで、序盤の戦闘が必要以上に複雑にならないよう考慮されていた。ローレシア城には無意味な旅の扉が設置されており、ここでは新たな移動手段を提供するものの実質的な冒険範囲が広がるわけではなく、位置関係が混乱しないようにとの配慮がなされている。 このほか、誤って装備できない装備品を購入するという悲惨なケースがほとんどなかったのは、主人公がすべての武器防具を装備できるよう設定されていたためである。このようなプレイヤーへの細かな配慮は、本作のみならず、以降のDQシリーズでも充分に見受けられるだろう。

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 ローレシア城の無意味な旅の扉は、ザハンの存在に関するある種の伏線にもなっていた。

システムや演出面の強化と容量不足の影響

 DQIIにおけるゲームシステム最大の追加点は、もちろん必然的な追加ではあったが、パーティー戦闘であることは言うまでもない。これに伴い、呪文、モンスターの行動パターンが多様化し、より戦闘が複雑なものになった。演出面でも、ハーゴンの神殿における固定戦闘ではダメージ表現が変化し、更に最終ボスの巨大さは王女のステータス表示が見えなくなるほどで、これらはインパクトを残すうまい表現といっていいだろう。DQIの竜王変身に始まり、シリーズではその後もボスの巨大化および特殊演出が定番となる。マップが前作の2倍になるなど、移動中における要素も多数追加された。新たに塔と呼ばれるダンジョンが登場したほか、洞窟の構造があたかも細長いと錯覚するのは、ダンジョン内における屋根構造の追加によるものである。新たな移動手段としては旅の扉や船が追加され、船による冒険は、その後のRPGにおいて「自由度」という概念を意識させるに至った。

 多くの面でパワーアップを果たしたDQIIではあったが、やはりROMカセットという限られた容量との悪戦苦闘は避けられなかった。本作の場合、プレイヤー側がこれらの問題の一部を間接的に感じられる点も興味深い。良作ゲームの場合、プレイヤーが妙だと感じるところには、大概容量の問題が見え隠れしているといっても言い過ぎではなく、例えば以下のような事柄が挙げられよう。
・ムーンペタからルプガナへの道のりがやや長すぎる
・ダンジョンでは2マス×2マスが1単位となっているため、落とし穴の場所がわかってしまう
・宝箱のワナは人食い箱の名残か?
・ボスモンスターのHPが低く、完全回復呪文ベホマで補っていた
 このほか、対になる没アイテムである「しのオルゴール」と「みみせん」は、以降のDQシリーズでも何度か没扱いを受けることになる。これらのアイテムを裏技を駆使して拝んでみるのも面白い。

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 ローラの門に分岐ルートがあるのは、当初は湖の洞窟の場所にあったサマルトリア城の位置変更に伴う名残だとか…。

じゅもんがちがいます

 最長52文字という復活の呪文(パスワード)の長さは、もはや限界の長さともいえる。パスワードが長いということは、それだけ複写ミスの確率も増加するということであり、実際、複写ミスで涙を呑んだプレイヤーが続出した。このことから、念のため複数の呪文を記録するというのが一般的となるが、この場合メモ帳に記録できるようなコンパクトな情報ではなかったため、専用のノートを活用する者も多かったようだ。 もちろん写真やビデオに撮っておくのが最も確実な方法だといえるが、当時そのような環境に恵まれていた者は少なかったであろう。また、例えそのような環境にあったとしても、複雑な機械操作を子供ができたかどうかは疑問である。当時我が家にはビデオカメラがあったため理論上はこういった複写法は可能であったが、小学校1年生の私が触らせてもらえるような代物ではなかった。

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 復活の呪文入力時に「じゅもんがちがいます」と表示されると、“王様にウソをつかれた”と正当化する子供達も少なくなかった。もちろん複写ミスによるものであり、一般的なプレイにおいて間違った復活の呪文が表記されたというケースは、現在でも知られていない。

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